大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和28年(あ)2134号 判決

本籍

朝鮮慶尚南道咸陽郡池谷面介坪里

住居

東京都足立区大谷田町三七七番地

第二足立寮内笹原良子方

自動車運転者

盧相瑾

大正三年九月八日生

本籍

北海道北見国紋別郡渚滑村基線一三一番地

住居

東京都世田谷区赤堤町二丁目四一二番地

会社重役

滝本亀吉

明治二六年七月二七日生

右の者等に対する麻薬取締規則違反被告事件について昭和二七年一一月一七日東京高等裁判所の言渡した判決に対し、各被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人滝本亀吉の弁護人鍛治利一同手代木隆吉の上告趣意第一点について。

本論旨については当裁判所昭和二六年(あ)第三六八四号事件における鍛治弁護人の本論旨と全然同文の上告趣意に対し当裁判所第二小法廷は理由なきものとして、これを排斥して居る、右判例に徴し本論旨も採用し難い。

同第二点は単なる刑訴法違反の主張にすぎない。控訴裁判所は、訴訟記録及び第一審で取り調べた証拠のみによつて直ちに判決することができると認める場合でも、常に新たな証拠を取り調べた上でなければ、破棄自判できないものではない(昭和二九、六、八第三小法廷判決、集八巻六号八二一頁参照)。

同第三点について。

論旨は原審が訴訟記録だけで書面審理したのは憲法三七条の公開の原則に反するという。しかし、原審は刑訴法に従つて公開の公判を経て弁護人の控訴趣意の陳述、弁論を聴いた上判決しているのであつて公開の公判を開かないわけではない。それ故論旨は前提を欠くもので理由がない。

同第四点は単なる法令違反の主張にすぎない。(原審が控訴趣意書提出期日の通知をしたことは記録上明白である。)

被告人盧相瑾の弁護人林博の上告趣意について。

被告人の身体の拘束を受けない旨の公判調書の記載のないこと所論のとおりであるが、だからといつて拘束を受けていたとはいえない(刑訴五二条参照)。論旨は控訴趣意で争うべき問題であつて不適法である。

よつて刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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